

八緒あびす 詳細設定
音源キャラクター八緒あびすの詳細設定です。
あくまで当サイト内文章創作にのみ適用されるものであり、
音源・キャラクターご使用の際この設定を遵守する必要はありません。
出身地:不明
現住所:不明
一人称:ボク、オジサン
二人称:キミ、お前
尊称:くん、ちゃんづけが多い。
「〜〜だよ、だね」と柔らかい口調。カタカナを交えたおじさんっぽい言い回し。
基本的に大体の相手が年下なので誰に対しても年上のオジサンとして振る舞う。
見た目は50代ほどだが、実年齢はその遥か上。
あまりに長すぎる時を生きた彼の精神は半ば崩壊し、人格がふたつに乖離した状態になっている。
ひとつは妻子を愛し、若者を見守るのが好きな優しげな中年──かつての彼の姿であり、そうありたいと願っている人格。
そしてもうひとつは目の前の人間を人とは認識できず、小虫を払うように殺してしまえる冷酷で残忍な怪物としての人格。
このふたつの人格によって彼は人を愛し、万世博物館の目的にそぐわない人間を始末してきた。
彼自身その矛盾に気づき、苦悩しているからこそ普段は自分が怪物であることを忘れ、とうの昔にその手で命を奪った妻子の幻覚に溺れて暮らしている。
万世博物館:
八緒の正体は実年齢1000才を超す不老不死者である。
元はありふれた凡人として生きていたが、たまさか“人魚の肉”を口にしてしまったことで不死の体になった。人間には長すぎる生の時間は、彼の凡庸な精神を容易く崩壊させた。
時に権力者に追われ、ひとところにとどまることも出来ず彷徨い続けた彼は、その最中さまざまな人間と彼らが織りなす悲劇を垣間見た。どれほど長く生きようと、どの時代にあっても、人間は常に悩み苦しんでいた。
いつしか自分の生の苦しみと、“人類”が繰り返す“業”と苦しみが彼の中で重なるようになっていた。
そしてあるとき、彼と同じく無限に等しい命を持つ不死者──シェオルと名乗る男に出会い、彼にこう持ちかけられる。
「自分たちははたしていつまで生き続けるのだろう、太陽ですらいつか命が尽きるというのに?」
「人も、星すらもいなくなった世界で、自分たちは孤独に生き続けなければならないのか?」
シェオルにとっては、あるいは忌々しい不死を紛らわせるための暇つぶしだったのだろうが、八緒にとっては天啓に等しい言葉だった。
人類を苦しみから救済する。
いずれ滅びゆく人類を保護し、種を繋ぎ続ける。
それは間違いなく不死者でもなければできないことで──罰のごとき生を歩み続ける彼に与えられた使命のように感じられた。
八緒とシェオルは手を尽くし、同様の考えを持つ人間や、異能や長命に苦しむ者たちを集めて結社を設立した。これが後に「万世博物館」を名乗る組織となる。
人類を救い、守る。そのためならばどんなものでも蹂躙し、いくらでも罪を犯す。
八緒の精神は、その理念に含まれた矛盾を疑問に思わぬほど狂い歪んでいた。
人魚の肉:
彼の本来の名前は楊(ヤオ)といい、かつては小さな漁村の長だった。
貧しく寂れた村で、村長といっても大した権力もなく、税を取り立てる代官に必死で頭を下げたり、村民のために村を駆けずり回る貧乏くじのような役回りだったが、それを苦とも思わずよく働く男だった。
病弱ながらも献身的に彼を支える妻と、彼女との間に生まれた心優しい息子。家族の存在がある限り、楊は幸せな男だった。
ある年、村を記録的な不漁が襲った。時化が何日も続いて漁にでることができず、海が落ち着いてやっと船を出せても魚が網にかからない。村民は次第に飢え、体の弱い者から次々に倒れていった。
このままでは村ごと全滅してしまう。妻と息子が病に伏せ、他の村民も同様の状態に追い込まれているのを見ていられなくなった楊は、荒れた海に無理やり船を出した。
そしてついに網にかかったのは奇妙な姿の巨大魚だった。
二丈近くはあるだろうその大きな魚の半身は、人間の上半身によく似ていた。
怪物だ、神の使いだと恐れる漁師たちをなんとか説き伏せ、楊はこの魚を村に持って帰り村民たちに振る舞った。いくら恐ろしい姿でも魚は魚、このまま飢えて死ぬくらいなら食べたほうがいいと。久々のまともな食事にありつけた村民は、魚がどのような姿をしていたかを知らないまま喜んで食べた。妻子が泣きながら食べているのを横目に、楊は捌いた魚に残った腑を食べて空腹を凌いだ。
その日の晩、異様な物音で目を覚ました楊は、床に臥した妻が奇妙な怪物に襲われているのを目の当たりにする。楊が真に驚き、慄いたのは、その怪物が息子と同じ服を着て──魚と人間の合いの子のような願望に我が子の面影を残していたことだった。
息子だったモノがその母親を襲い、生きながらに食べている。その光景に悍ましさを感じた楊は、気づくと手近な鉈でその怪物の頭を叩き割っていた。
混乱しながら家を出ると、村はどこも楊の家と同様の有り様になっていた。魚人の怪物と化した者と、その怪物に食い殺された者。訳のわからぬまま楊は村中の怪物を殺して回った。
村人がおかしくなったのはあの魚を食べたせいだと気づくのにそう時間はかからなかった。
村人たちの亡骸、恨めしげな顔で事切れている妻子の屍に耐えきれなくなった楊は時化が続いている海へと身を投げた。しかし沈めど沈めど彼の命は尽きることなく、どころか地上と同様に息すらできる。外見こそ変わっていなかったが、楊もすっかり怪物と化していたのだ。
いくら絶望し、自分の首に刃を突き立てようと死ぬことができず、また何年経っても老いることができなくなった楊は放浪者として長い永い旅に出た。
過分すぎる命という罰は、大切な存在をこの手で殺めた罪によるものだと悟って。
不老不死:
異形生物、あるいは怪異“人魚”の肝を喰らったことで得た体質。
自分の細胞を自由自在にコントロールすることができ、本来であれば肉体の全盛期である若者の姿に戻ることもできるが、彼は“罪”を犯した当時の姿に固執している。
人間を片手で捻り潰せるほどの怪力になることも、戦闘機並みの速度で走ることも可能。もちろん心臓を貫かれようが首を切られようが死ぬことはない。
唯一、細胞全てを焼却するほどの超高温の炎で身を焼かれればあるいは悲願たる死に手が届くかもしれないが、万世博物館の目的を達成するまではあえてその方法は封印している。
体質的には“人魚”とほぼ同質になっているため、実は地上より海中の方が体調が良くなる。定期的な海水浴と日光浴が健康の秘訣。
「ボクはただのオジサンだよ。ちょっと長生きしてるだけ」
「飛んで火に入る夏の虫って言うよね。小魚だってわざわざ鯨があくびしている口元に近づいたりしないのにね」